研究内容

免疫療法抵抗性がんの抵抗性分子機構の解明と克服

免疫チェックポイント阻害剤を中心とした免疫療法は、がん治療に革命を起こしました。しかし半数以上の患者さんでは、初めから効果がない、あるいは治療の途中で抵抗性を持つがんが出現してしまいます。

T細胞は、免疫療法で主要な働きを担う免疫細胞で、MHC分子に結合したがん抗原を認識してがん細胞を殺傷します。しかし、こうした特異的な殺傷機構は、T細胞による認識を逃れる性質を獲得したがん細胞の増殖を許し、抵抗性細胞として出現させます。我々は、T細胞によるMHC-I欠損抵抗性がん細胞の殺傷を可能にする分子経路がないか、ゲノムワイドCRISPRスクリーニングを用いて探索しました。その結果、オートファジーとTNFシグナル経路を新規標的として見出しました(Ito et al. Cancer Discovery 2023)。これら経路の阻害により、MHC-I欠損がん細胞がT細胞由来サイトカインに対して感受性化しアポトーシス死することがわかりました。さらにマウスモデルを用いて、TNFシグナル経路とオートファジー双方を薬物あるいは遺伝子操作により阻害することで、MHC-I欠損がん細胞を有するがんをコントロールできることを明らかにしました。

現在がんの転移巣と免疫系との相互作用を詳細に解析することで、転移巣のコントロールに有効な新しい治療標的を明らかにしようとしています。