研究内容

自己免疫疾患の原因となる自己抗原の包括的な解明

免疫系は病原体の排除を主な機能とするため、自己と非自己とを厳密に区別する必要があります。この区別(免疫自己寛容)が破綻すると免疫系が自己組織を破壊し、自己免疫疾患を発症します。自己免疫疾患では生命に関わる重篤な内臓病変が生じるため、根治治療法の開発が求められています。自己免疫疾患の病態の中心は、自己構成成分(抗原)を認識したT細胞を起点とした組織破壊であるため、T細胞の抗原特異的な制御が根治治療として有望です。しかし技術的困難により標的自己抗原の同定は進んでいませんでした。我々はこれまでに自己抗原同定法を独自に開発し、代表的な自己免疫疾患である関節リウマチにおける新規自己抗原を報告してきました(Ito et al. Science 2014)。その過程で、複数の自己抗原が病態に関与することが明らかになってきましたが、その全体像は不明で最適な治療標的の特定には至っていません。現在、我々が開発した自己抗原同定法を用いて、疾患に関与する自己抗原の数、種類、病態における重要性の階層構造を包括的に解明することを目標に研究を行っています。特に、どの自己抗原への免疫反応を無効にすれば疾患が起こらないか、という点まで明らかにし、抗原特異的な根治治療法の実現に不可欠な基盤を築くことを目指しています。また本研究により標的自己抗原に共通するユニークな特徴を明らかにできれば、免疫学の基本原理である免疫自己寛容を支える、これまでに知られていない分子機序の解明につながることが期待されます。